八百文字程度の映画ブログ

古今東西膨大な数の映画から、あなたが観たい映画を見つけるお手伝いが出来ればと思い、つづります。

「ドッグデイズ」これぞ観る拷問

こんな方におススメ!

・観るな、と言われると観たくなる ・暑さが好き ・我慢強い

 

はじめに

観ながら「もう許して下さい」と言いたくなる拷問のような映画です。軽い気持ちで初デートに選んだ挙句に気まずい関係になり、監督にクレームをつけるためにオーストリアまで行きました、という人がいても、「あるよね」と理解できる究極の不愉快映画。一言でどんな映画ですか? と聞かれたら、満面の笑顔で「地獄です」と答えます。

 

見所1. 不愉快なシーンの数々!

不愉快な人間たちが「最も暑い日=ドッグデイズ」に織りなす不愉快な日常の一シーンを、長回しで撮りまくる、全体を通るストーリーはなく、ただひたすらその連続です。劇場で観ながら、「えーと、いま自分は何に耐えているんだっけ……」と思わざるを得ない拷問のような時間を過ごせます。

 

見所2. モンニャという伝説

登場する不愉快な人間の中でも、ぶっちぎりで頂点に立つ女(個人的通称モンニャ)のことを思い出すと、目の前の物を蹴り飛ばしたくなる衝動に駆られます。むしろそこまで不愉快な人物なら観てみようかな、と思うかもしれませんが、そんなあなたに一言お伝えします。「やめときな」。

 

見所3. なぜか泣けてくる

とか言いながら、けっこう映画の細かい内容を覚えていて、思い出すとなぜか泣けてくるのです。その感情を一言で表すなら、「だってこれが人間だから」。

ささやかな幸せを求めて生きる中で、何かがずれてしまって、うまくかみ合わず、もがき、苦しみ、傷つけあう飾らない人間の営みが、ただ切り取られています。でも「それが人間だよね」と思うと、あまりに切な過ぎて、のた打ち回りたくなります。

 

おススメ度…10%

おススメは、致しません! と断言しつつも、こんなにも観て欲しいと思える映画も珍しいです。この拷問を耐え抜いた人だけが見える景色も確かにあり、その景色をぜひ観て欲しいです。

究極の表現からくる人間愛の描き方に感嘆すると同時に、映画とは何か、エンターテイメントとは何か、そして人生とは、と深いところに思考が落ちていくこと請け合いです。

 

(2001年、オーストリア